幻影肢と演劇

「幻影肢」の患者さんの身体の痛みの対処方法に「ミラーセラピー」があるという。失った身体の代わりに残った身体を鏡にうつして、それがあるかのように動かしてみることで、一時的に痛みを止める方法らしい。運動行為とイメージによって、失った身体が存在しているかように感じるのだそうだ。こういった行為は、幻影肢の患者さんのみならず、すべての「失ったもの」に対する救いになるかもしれない。そしてここに演劇が入りこむ隙間があるように思う。そもそも演劇は、シャーマニズムから生まれたと言われているように、失ったものを現在化させてみせることができる。つまり演劇は、人々の痛みを一瞬忘れさせてくれるもの。そしてその機能により、その逆(痛みを思い出させてくれるもの)を起こすこともできる。のでは。