Day5:朝(昨日のショーのこと)

昨日のことを軽く。

 

日本の仕事をホステルでやった後、散歩もかねて、お気に入りの本屋へ向かう。途中ジョナサン・ブロフスキー作キネティックスカルプチャー『ハマリング・マン(Hammering Man)』が目印のシアトル・アート・ミュージアムのショップでTシャツ購入。アンダーグラウンドツアーの待ち合わせ場所や手品&トーイショップを通過して、歩く歩く。Pionner squareをすぎるまで歩いたが、結局見つからなかった。もしかしたら移転しているのかも。

 

なんだか疲れて午後2時間昼寝。

 

6時からのリハーサルに合流するためにシアターに行くが誰もいない。あま〜い香りに包まれたガムウォールの前。「ここは原宿か?」と思わせるたくさんのツーリストたちが、以前より3倍くらい拡大されたガムウォールの前で写真をとっている。今やシアトルの名物になったこのガムウォールは、マーケットシアターで「シアタースポーツ」を観にきたオーディエンスたちが、列を作って並んでいるときに、自分が噛んでいたガムを壁にはりつけたのが始まりだそうだ。

 

リハーサルが中止になったのを知ったのが7時。ぐったり疲れてホステルで休む。劇場とホステルが超近いので、疲れても横になれるのが嬉しい。

8時に劇場へ。ランディの息子ジョセフが受付をしているので挨拶。この前まではガキンチョだったのに、なんと17歳だって。自分が急におばさんになったような気持ちになる。あ、いや「なったような気がする」のではなく、本当に「おばさん」ですが(苦笑)。

 

ショーを観る。出演者5人のロングフォーム。途中途中でオーディエンスに質問して、そこから出たテーマで演じていく。時間を設定するのが新しい。タイトルは「人生で経験したことのある特別な旅行」。


このカンパニーのすごいところは、ちゃんとストーリーがつくれること。プレーヤーに精神的にスキル的に余裕があるが見て取れる。本当の意味で「その場でストーリーが作られる」。中級のプレーヤーは、上達してくると、頭の中で自分のプランを持ち、それを達成させようとする傾向がある。しかしここではそれが全く見られない。すべてを「手放して」いるプレーヤー同士が、いまここでドラマを(楽しみながら)作っている感覚が伝わってくる。

 

5人のパフォーマーの演技やインプロのレベルが異なっているのも、研究している身としては興味深い。このレベルになっても「考えすぎてシーンに貢献できない」という状態が起こる(上演後の振り返りでも本人が語っていた)。また熟達したプレーヤーに引っ張られて、パフォーマンスの質が高まる中級プレーヤーもいた。逆に、経験があるゆえに、それが自分の限界を作っているように見えるプレーヤーもいた。確かに安定していて、確かに面白いんだけど、はみ出るなにか/飛躍する何かが見えない。オーディエンスは、パフォーマーが熟達者であればあるほど、彼らの「リスク」をとる姿が見たいのだけれどなぁ〜。むしろ多少自分に自信がなくて、フラジャイルな姿を舞台で見せてくれるパフォーマーの方が、わたしは魅力的だと感じる。舞台で見たいのは、パフォーマーのスキルや自信ではなく、普通の人だと怖くて見せることのできない内面や身体だと思うから。これは即興であろうが台本であろうが変わりはないだろう。このように、異なったレベルのパフォーマーたちがインタラクションすることによって起こる化学反応は、即興的なライブパフォーマンスの持つ魅力だと思う。

 

ショーの後の振り返りにも参加。即興演劇の場合は、意識的に振り返りの内容を定める必要がある。同じコンテンツは2度と繰り返されることはないので、できた内容の批判をするのはナンセンス。しかし次のショーでも、同じ制約によって舞台創作を行う必要はあるため、その作業に効果的な振り返りの仕方が求められる。実はこれこそ慎重に考えられなくてはならない点である。「どのように/何を振り返ればいいのか」というデブリーフの部分も大事な作業となる。若くて自覚のないグループの振り返りは、感情的になりすぎる傾向があると思う。目的をずらさずに、必要な振り返りが必要だ。

 

ちなみに、この公演はすべてビデオで撮影したので、もし機会があったら、みなさんにもお見せしたいなぁ〜と思っています(UPに了解済み)。