コロンビア6日目

ワークショップが始まって3日が終了。昨日は朝クラスは前半:アブストラクトのムーブメント(手と手を繋ぐやつ)、後半:シーンづくり(contactをメインに)行なった。朝クラスの教室は音楽棟内だったので、隣の教室から、ラテン系の音楽が始終聞こえてくる。ドラマティックなムーブメントができそうなのに、参加者はラテン系のテケテケ音楽に引っ張られて動きが軽くなってしまう。「もーあの音楽迷惑だよね〜」と参加者に言ったら「こっちも音楽かけちゃおうぜ〜気にしなくていいよ〜!」というので、大音響でマーラーやCocoの曲を流した。きっと日本なら、すぐに隣から苦情がくるだろうが、こっちでは誰も文句を言わないようだ。たちまち参加者は盛り上がって、ものすごいムーブメントに変化した(だれかが映像を撮っていたので、ぜひアップしたい)。後半のシーンでは「間」について話す。日本の概念のひとつである「間」はラテンアメリカの人たちにはとても新鮮な考え方のようだ。確かに、こちらの民芸品は、カラフルな色や形がびっしりと描かれているものが多い。音楽も軽快でつねに何かがある感じ。日本のように「止まる」とか「開ける」という概念はあまり無いのかもしれない。

 1時に終わって、大学のカフェテリアで参加者とランチ。メキシコ、ベネズエラなどのインプロ情報を聞く。メキシコには1つ活発に活動しているインプログループがあるが、大地震のためにインプロの劇場が崩れてしまったため、ただいま復興中。メキシコの人たちはどうしても自国にとどまって活動するというよりは、アメリカに流れていってしまう傾向があるそうだ。話をしてくれた彼も、Up light Citzen Brigateなどアメリカの有名なインプログループのWSを受けた経験がある「でもボクはメキシコにとどまって、復興をしながらカンパニーを強化したり、新しい人たちと一緒に活動をするよ」と話してくれた。エクアドルでも13年ほど活動しているインプログループが1つあるそうだ。しかし問題はそれ以外のグループが存在していないこと。話しをしてくれた彼女は友人と3人で一緒にエクアドルからきて、ここでインプロを学んでいる。3人でこの経験をシェアして、自国に持って帰り、新しいインプログループを立ち上げると熱を込めて話してくれた。

ここで彼らの名前がでてこないのは、まだわたしが彼らの名前を知らないから。こちらでは「名前をガムテープに書いてはる」という文化がないらしい。初日にガムテープをとお願いしたのだが、Gigioが困った顔をして「今度さがしてくる」と言っていた。その後もってきていないので、WSではまだ名札がない。

2時30分にアパートに戻り、昼寝。一度寝ると起きるのが辛い。でも起きなくちゃ。

5時に起きて6時から夜クラス。夜クラスではステイタスをテーマに。先日日本の俳優さんたちとインプロ勉強会をやったときに編み出した、タオルを使ったエクササイズを中心に。最後に「せっかく日本からもってきたから」とトランプステイタスも行なった。いかに「目的」がキャラクターにとって大事なのか、それがある/ないでは身体性がまったく異なることを目の当たりにする。ステイタスに関する議論。ここではみんな気軽に発言するので、彼らをencourageする必要はない。逆に話がはずみすぎるので、それを制止させるのが大変。私の通訳は、大きな劇団でマネージャーとして(時に女優として)働いているベッキー。ものすご〜く気がきく人で、私の話すリズムを壊さずに素早く英語をスペイン語にしてくれる。ときどき2人でデモンストレーションをするのだが、急にシーンを始める私に即座についてきてくれて、絶妙に面白い。日本でもなかなか出会えない気の利く人材。彼女は信じられないくらいわたしを超リスペクトしてくれて、そのリスペクトの仕方が「気を使う」ではなく、ストレートに「尊敬しています」と言いに来る。日本で受けたことのないような扱いに戸惑いながらも、人と対するときの、新たな誠実な表現方法を体験している。彼女以外でも、参加者のビヘイビアはとても興味深い。私に対しては、礼儀ただしく(かならずハグの挨拶にくる)、フレンドリーで、あたたかく、かつ遠慮やお世辞がない(ように見える)。参加者同士でも、フィードバックでは、結構辛辣なことを言うときもあるようなのだが、言い合いになった後、その2人がハグをしているところを何度も目撃。たぶん和解しているのだと思う。まだ推測でしかないのだが、彼らはストレートに思ったことを言うけれど、それを感情的なしこりにしないコミュニケーションの方法をとっているんじゃないかなと思う。国としては決して豊かでも安全でもないが、人々はこうやって暖かいコミュニケーションをしている。グローバルの中のローカルな関わりを知ることは、人間としてとても大事なことではないかと感じる。ぜひ日本の学生やインプロをやっている人たちを連れてきて、交流できたらいいなと思う。