劇団朋友の「蝸牛庵物語」を観た。久々の俳優座劇場。入るとすぐに下り階段になっていて、なぜか間仕切りの向こうはパブというロビーは昔から変わっていないけれど、豪華なお花が飾られて、初日らしい華やかさがある。さてお芝居。幸田露伴と娘文の関係を軸として、戦前から戦後への日本の文芸界の一端が描かれる。上演時間2時間40分は長く感じるというより「じっくり味わったなぁ〜」という満足感。父と娘の会話など、戯曲はもっと練り上げられそうな部分もあるように感じたし、時代のリアリティをどこまで提示できるかを若い役者に任しているところはチャレンジング。特に前半はもうちょっとコメディタッチでもいいんじゃないかなぁ〜とも思った。ただ文学座の西川さんのシンプルな演出や照明&装置の知的なプランが、この芝居のストーリーテリングを下支えしている。演劇で歴史的人物が取り上げられるのは珍しくはないけれど、西田幾多郎や三木清など、知っている名前が登場すると、無条件にワクワクしてしまった。エンディングは待ってましたという感じ。文学が好きな方には特に楽しめる作品だと思います。