日本文学盛衰史

 ただいま上演中の青年団「日本文学盛衰史」を観た.

原作を読まなくても十分楽しめるだろうが, やはり読んでから観た方が秒きざみの味わいが深いかも. たくさんの素晴らしいモーメントがあって, 役者さんたちも魅力的だった.平田オリザさんの作品としては新天地なんじゃないだろうか.

 認知科学的に勝手に推測すると, この作品は高橋源一郎さんの原作からの触発によって生まれたと思う. そしてあの破天荒な小説の破天荒さにイエスアンドできたからこそ, 自分のリミットを超えることができたんじゃないかな. と勝手に思った.

 また原作の独特な構造が影響して, わたしの頭の中では, さまざまなものごとが時空を超えてつながっていった. 新しい文体を探しもがく文人たちの姿は, 現代口語演劇の流れとも重なったし(きっとすべての時代を担った演劇人にも通じるだろう), わたしは勝手に自分に引き寄せて「文学を信じる(しかないじゃないか)」という森鴎外と「インプロを信じる(しかないじゃないか)」という自分を照らし合わせて泣きそうになり, トツトツと勇気をもらっていた。

 山内さん, ひろこさん,大塚さんとも終演後にあえて嬉しかった. 照明の井坂くんも元気そうだった. 平田さんが終演後にロビーにいらっしゃって, 一応挨拶したけど, いつものことながらアタフタしてしまい, 結局挨拶したかしなかったのかよく分からないような感じで, またもやちゃんと出会えなかったような気がした.

 同じ研究室の野澤さん(書道家の創作プロセスを研究してるアーティストのくせに(と言ってはなんだが)めちゃくちゃ数学に強い人)と, てっちゃんで飲む. 明日が論文投稿締め切りなんだけど(冷や汗). いろいろな次元がまぜこぜになって, ビールとホッピーもグルグル回って, 自分が生きてるのか死んでるのかよく分からない状態になり泥酔した.

 

 それにしても昔だったらいい芝居を観たあとには必ず「わたしも役者として出演したかったな」と思ったものだけど, 最近は「あんなに若くてよくできる役者さんがいるなら, 別にわたしがやらなくてもいいな. わたしにはわたしにしかできない使命があるぞなもし」と思うようになった. 少し楽に生きられるようになったのかもしれないな. 明治の文豪たちには怒られるかもしれないけれど.