わたしの修士論文執筆体験と地獄絵

修士論文提出を振り返って

 これからお話することは、きっと大学のときに、研究の仕方や論文の書き方を習得した方々には、まったく関係ない話だと思いますし、地あたまが良い方であれば、まったく問題な話だと思います。あくまでも個人的な主観的なたわごとだと思って「こんな人もいるんだ。ふ〜ん」って感じで笑ってやってください(苦笑)。

 今年1月10日に修士論文を提出しました。タイトルは「即興演劇に関する実証的研究〜台本演劇との比較において」です。海外のカンファレンスで発表したときは「面白い研究だから頑張れ!」とたくさんの研究者から応援していただいていたので、すっかり図に乗って自信マンマンでした。それがこんなことになるとは。

 提出までに費やした数ヶ月は、今までに体験したことがない混乱や屈辱や自己嫌悪がありました。まず一番に混乱したのは、自分の研究に関して、具体的に「こうすればいい」ということは言ってもらえず、抽象度の高い指摘をされ、どうしたらいいか具体的に分からず(これは学問の下地がないから)、むやみに図書館に通い詰め、手当たりしだいに書物を読み(当てずっぽうだから的外れの読書も多々)、どんどん時間が過ぎていったことです。賽の河原で積み上げた石を、鬼にあっさり蹴飛ばされるような、そんな感じ。自分ではものすごくやっているつもりだったのに、先生や先輩から見ると「なんでそんなことに時間を使ってるの」という感じでした。でも、分からないんですもん。分かるまでやるしかないと思って。

 提出後の口述試験では厳しい意見を叩きつけられ、心身共に打ちのめされました。よくテレビのギャグで、顔にケーキのパイをぶつけるのありますね、あんな感じで「おまえは無知だ。研究なんてやめちまえ!」という名のパイを、思いっきり(顔だけではなく)全身にぶつけられたような衝撃でした。しばらくは何をどうしたらいいのか分からなくなりました〜。いやぁ大人になってから、このように頭ごなしに怒られることは、あまりないことですので、きつかったです(苦笑)。

 

 

 私は自分を、割と我慢強いタイプで、本当に苦しいことは人に言わないタイプだと思っていたのですが、その自分が外界に弱音を吐かなくては生きていけないような、そんな日々でございました。でもこうやって文字にしていくうちに、ちょっとづつ気持ちが落ちついてきているような気がします。面白いことに、地獄絵とか賽の河原とか、画像を探して、それを見ているうちに、自分の気持ちが落ちつてきています。不思議です。本当にこの絵の苦しんでいる人たちみたいだったんです、私。

 そして今なら分かります。どうしたら良かったのか。何を自分は知らなかったのか。

それは「研究とは何か」ということ、「アカデミアの手続き」ということ。資料の探し方、まとめかた、ロジックのたてかた、学術的な文章の書き方。それはわたしが大学院に入る前にイメージしていたものとは全く違っていて(もっと新しいことを求められているのかと思っていたけれど)、もっとレンガづくりの家を建てるような感じ。レンガじゃなきゃだめだし、下から積み上げていかなくちゃだめだしということ。修論が終わって初めてわかってきました。

いっそ落としてほしい〜とも。

絶対に落ちる。いやいっそ落とされたほうがまし。これ以上研究を続けるのは無理っていうか、これ以上、自分の無知さやバカさを他人から指摘されたくない。いっそ私を殺してほしい〜。

博士課程への進学に関しては正直そう思っていました。

でも驚くべきことに合格通知がやってきました。

おお〜合格だ〜。

合格自体は、なんとなく気持ちのいい響きです。

でも冷静に考えると、また修士論文執筆の時のような

地獄が待っているかと思うと、、。

 

はっきり言って辞めたい。

辞めようか。

 

そんな気持ちがぐるぐるします。

 

こんな時、どっちの道を選ぶか?

 

私のモットーは、「イエスアンド」です。

 

いやだけど。

怖いけど。

達成できる気がしないけど。

 

それでも。

 

 

インプロバイザーの悲しいサガ。

 

苦しくても、イエスと言って、アドベンチャーを選ぶ。

 

それがインプロバイザーの道。

 

ということで、

 

ただいま博士課程入学の手続きをしています。

 

これが、また、、、七面倒くさいったらありゃしないっ!

 

 

すべての書類をプリントアウトして、記入を手書きでして、印鑑押して郵送。

もしくは窓口で手渡し。

メールなどインターネット上での作業はNG。

 

私はニュージーにいるので、お友達や研究室の方にお願いするしかないのです(ありがとうです!)。

代理人が提出する時は、代理人に対する委託書を自分で作成して、

代理人も身分証明書を持っていかなくてはなりません。

 

長期履修をする場合は、その旨を担当教授と相談して(うちの先生は今アメリカじゃっ!)、

承諾してもらったら、在職届けを作成して、会社に提出して印鑑をもらって、

それを含めての、長期履修書提出です。

 

しかも準備期間は、発表から5日間(手渡しは7日間)。

しかも郵便は書留だったので、郵便が届くときに家にいられなかった場合(ほとんど人がそうでしょう)、

ポストに入っている不在票で書類が到着したことを知ります。

ここですでに1日経過。

不在票の電話番号に郵便受け取りの日程を連絡して(それでも次の日に仕事だったら受け取れないときもある)、時間を指定して受け取りをします。ここですでに2日が経過している可能性もあり。

ここから3日以内に、すべての手続きをしなくてはならないということです。

 

しかも書類には<<厳守>>の文字が。

絶対に期限に間に合わないと受け取りませんという強固な意思が読み取れます。

恐ろしい。

これで1日でも遅れたら、入学が取り消しになってしまうのでしょうか??

 

ちなみに私が所属しているのは、学際情報学環というところで、

割と最先端の学問をやっているところです。

そんな最先端の学問の場が、

こういうところでめっちゃくちゃ細かく古く厳しいのです。

これが最先端の学術機関だっ!

 

逆にいうと、もしかしたら、このような体制が、

わたしが知らなかった「アカデミアの実態」なのかもしれません。

 

そして、こうやってグチグチ文句を言っている輩は、

アカデミアの輪の中には、入れてもらえないんじゃないかな〜と

すでにアウェイな感覚でいっぱいです。

 

いずれにせよ。

お友達、研究室の方、家族に助けられなあら、

惜しみない出費(海外からの速達は高額!)によって、

自分ができる限りを駆使して、入学手続きが期限までに間に合うように

なんとか頑張っています。

 

これで間に合わず、

入学が取り消しになったら、、、。

それこそ

地獄??